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Bcl-2ファミリー

Bcl-2ファミリーの概要

Bcl-2は最初に発見された抗細胞死亡の遺伝子であり、細胞アポトーシスを誘発する様々な刺激物(血清の不足、ヒートショック、化学療法剤など)を阻止してきた。更に、Bcl-2は壊死細胞死亡の幾つかの形式(低酸素症と呼吸抑制による壊死など)をも阻害できる。

Bcl-2ファミリータンパク質は構造上似ている部分がある:まず、炭素末端に親水性経膜ドメイン(TM)があり、これはタンパク質の細胞内局在化を決定することができる;第二に、四つの保存されたBHドメイン(BH1-BH4)があり、BH1とBH2は全てのメンバーにシェアされ、Bcl-2ファミリーメンバーの二量体化に関与した。Bcl-2ファミリータンパク質の顕著な特徴の一つは、ホモ二量体とヘテロ二量体を形成する能力である。Bcl-2ファミリータンパク質の抗アポトーシスとプロアポトーシスメンバーの間のヘテロ二量体化は、そのパートナーの生物学的な活性を阻害し、プロアポトーシスタンパク質のBH3部位を、抗アポトーシスタンパク質BH1、BH2とBH3で構成された疎水性ポケットに挿入することで媒介される。BH1、BH2、BH3の他、BH4は抗アポトーシス活性には不可欠であり、BH3はアポトーシス促進活性には不可欠である。

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図1:Bcl-2ファミリータンパク質の同族関係

 

Bcl-2ファミリータイプ

アポトーシスにおけるBcl-2ファミリーメンバーの役割により、Bcl-2ファミリーメンバーは二つのカテゴリに分けられる:抗アポトーシスとアポトーシス促進型である。

1.抗アポトーシス型のBcl-2ファミリータンパク質は主にBcl-2, Bcl xl, Bcl-w, A1, Mcl-1, Bfl-1などがある。これらのタンパク質は少なくとも二つの構造ドメイン、BH1とBH2があり、抗アポトーシス効果を持つ。

2.アポトーシス促進型のBcl-2ファミリータンパク質はその構造の特徴により二つのタイプに分けられる。

  ① Baxサブタイプは主にBax(Bcl-2関連のタンパク質)、Bakl(Bcl-2拮抗剤キラー1)とBokである。Bokには三つのドメインがあり、BH1、BH2とBH3である。BH4ドメインは含まれていない。

  ② BH3だけのサブタイプ:主にBid, Bad, Bik, Bim, Noxa, Pumaだけなど。BH3ドメインしかない。

BaxとBakはBcl-2ファミリーに属している主なアポトーシス分子である。活性化されたBaxとBakはミトコンドリアに転座され、オリゴマー化のために構造変化し、ミトコンドリアに挿入して、ミトコンドリア外膜孔を形成し、ミトコンドリア外膜透過性(MOMP)を向上させ、多くのアポトーシス促進因子を細胞質に放出し、アポトーシスを起こす。

 

Bcl-2ファミリーとアポトーシス

Bcl-2ファミリータンパク質は主に、自己二量体化またはBaxなどのタンパク質とヘテロ二量体を形成することで細胞アポトーシスの制御機能を発揮する。Bax-Bcl-2ヘテロ二量体はBcl-2 ホモ二量体の抗アポトーシス効果を妨害し、アポトーシスを促進する。Bcl-2タンパク質が膜への結合はその機能にとても重要である。実験の結果によると、膜局在化の能力を失ったBcl-2タンパク質の抗アポトーシス能力が著しく弱まり、異なる細胞内局在化のBcl-2タンパク質は、様々な種類の細胞において様々なアポトーシス経路に関与する可能性があることがわかった。

1. ミトコンドリア膜におけるBcl-2は、少なくとも、下記の三つのレベルでアポトーシスの阻害の役割を果たしている:

①Bcl-2はミトコンドリアチオールグループの酸化還元状態を変え、膜電位をコントロールし、細胞アポトーシスを制御することができる;

② Bcl-2タンパク質はBax/BAKのオリゴマー化を阻止でき、よってミトコンドリアシトクロムCと/またはAIF(アポトーシス媒介)などの重要なタンパク質の放出を阻害し、細胞の生存率を促進することができる;

③ Bcl-2はカスパーゼ-2などのカスパーゼ活性化を阻止できる。ミトコンドリアシトクロムC放出の上流で抗アポトーシスの役割を果たす。研究の結果により、この効果は主にCED-4によって達成されていることが分かった。Bcl-2は、CED-9と直接に相互作用をすることにより、CED-3/CED-4複合体のけるCED-4のオリゴマー化を阻害でき、よってカスパーゼの活性を阻止する。

2. Bcl-2は、細胞死亡時にCa2+の放出を抑えることでアポトーシスを阻害する。細胞アポトーシスのプロセスで、DNA消化にはCa2+-依存のエンドヌクレアーゼの関与が必要で、小胞体にあるBcl-2タンパク質は小胞からCa2+の放出を遮断でき、Ca2+-依存のエンドヌクレアーゼのを活性を減らし、よって細胞のアポトーシスを遮断する。

3. Bcl-2タンパク質は、ミトコンドリアと核膜孔複合体におけるシグナル分子に作用でき、細胞内シグナル伝達をコントロールし、細胞の生存期を長くさせる。Bcl-2タンパク質は、その抗酸化効果を発揮し、または転写因子NF kappaBを制御することで酸化フリーラジカルの生産と細胞のアポトーシスを阻害する。

4. Bcl-2はP53依存性アポトーシス経路の活性化を誘発できる。試験管内試験における複数の細胞株の研究結果によると、Bcl-2のサイレンシングは、一般的に大腸癌でP53依存性アポトーシスを誘発することができ、Baxとカスパーゼ-2はBcl-2/P53アポトーシス経路においては不可欠な媒介物である。これに基づき、これらの生理学的な条件の下では、Bcl-2はアポトーシス前駆体であるP53の機能を阻害でき、一部のストレス因子の影響下では、P53の活性電位は誘発される。活性化された、安定しているP53がBcl-2の発見率を変え、よってアポトーシスを誘発することが確認されている。

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図2:Bcl-2と細胞の生存とアポトーシス

 

Bcl-2ファミリーと腫瘍

プログラム細胞死の阻害は、腫瘍形成プロセスで最も肝心な一歩である。Bcl-2遺伝子は、重要なアポトーシス阻害遺伝子として、細胞の自己安定バランスメカニズムを破り、破損または変異した細胞が除去されることから適時に阻止した。増殖遺伝子と成長阻害遺伝子の相乗効果の下、腫瘍に発展する。Bcl-2は細胞の寿命を延長し、アポトーシスを阻害することで細胞を蓄積し、腫瘍形成におけるその役割を始める。Bcl-2遺伝子自体は強い癌遺伝子活性を持たないが、その活性は点突然変異の後著しく増強され、腫瘍の進行を促進した。Bcl-2遺伝子の転座を伴う体細胞突然変異は、濾胞性リンパ腫をびまん性大細胞リンパ腫に転換させることができる。Bcl-2は血管内皮増殖因子(VEGF)とその他の因子と相互作用でき、よって腫瘍の血管新生を影響し、腫瘍の形成と進行を促進する。Bcl-2は、肝癌、前立腺癌、大腸癌、肺癌、胃癌、非ホジキンリンパ腫、神経芽腫と乳癌など、数多くのヒトの腫瘍に発見が高い。現時点では、Bcl-2の高い発見はある腫瘍の特徴ではなく、腫瘍細胞の増殖状態を反映していると見られている。

Bcl-2タンパク質は細胞のアポトーシスを阻害する。これは多くの腫瘍の形成に関連しているだけではなく、腫瘍化学療法耐性の形成にも重要な役割を果たしている。実験の結果によると、Bcl-2の過発見は、細胞を化学療法の薬物(デキサメタゾン、シタラビン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド(VP-16)、カンプトテシン、ナイトロジェンマスタード、5-フルオロウラシル、ミトキサントロン、シスプラチン、ビンクリスチン、および一部のレチノイン酸化合物)に対してより耐性をあげることができる。より高いレベルのBcl-2タンパク質による腫瘍細胞の薬剤耐性は一般的な化学耐性とは違い、その違いは主に以下のとおり:①Bcl-2は、細胞における薬剤の蓄積を阻止できない;② Bcl-2タンパク質は、薬物によるDNA損傷の程度や、細胞による損傷したDNAの修復速度を変えることはない。Bcl-2タンパク質は、ヌクレオチドプールや細胞周期速度を影響しない。

Bcl-2ファミリー阻害剤

1、Venetoclax (ABT-199; GDC-0199)BH3の擬態剤であり、BH3単機能タンパク質の作用を擬態し、BH3に似ている方法でBCL-2タンパク質と結合し、よってBCL-2がBAXまたはBAKと結合する能力を阻害する。Venetoclaxは効果的で、選択的で、経口活性のBcl-2阻害剤であり、Ki値は0.01nM以下である。

2、Lisaftoclax(APG-2575):Bcl-2とBcl xlのデュアル阻害剤であり、IC50値はそれぞれ2nMと5.9nMである。Bcl-2タンパク質を阻害することで、腫瘍細胞におけるプログラムされた細胞死亡のメカニズム(アポトーシス)は回復され、よって腫瘍細胞のアポトーシスを誘発し、腫瘍を治療する目的を達成する。

3、Sonrotoclax:効果的な経口活性のBcl-2阻害剤であり、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、急性骨髄性白血病(AML)、非ホジキンリンパ腫(WM、MCL、MZLを含む)と多発性骨髄腫(MM)に適応する。

4、DT2216: DT2216はタンパク質加水分解標的キメラタンパク質(PROTAC)であり、BCL-2野生型とマルチ薬剤抵抗性の変異種(G101V、D103Yなど)を効果的に、選択的に阻害する。DT2216はVon Hippel Lindau (VHL) E3ユビキチンリガーゼをリクルートすることでBCR-ABLタンパク質を降格させる。

 



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