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典型的なシグナル経路の概要 - カスパーゼタンパク質ファミリー

 

カスパーゼは細胞質に存在する一連のプロテアーゼである。その総称は、システイニルアスパラギン酸特異的プロテアーゼである。カスパーゼの普遍的な特徴の一つは、その全ての活性部位にはみなシステインを含めており、よって標的のタンパク質のアスパラギン酸残基でペプチド結合を特定的に切断することを可能にさせる。これは、カスパーゼが特定のタンパク質を高選択的に切断することを可能にさせる。プラグラム細胞死亡(アポトーシス、パイロトーシスや壊死など)と炎症で重要な役割を果たしている。現在、11の異なるカスパーゼは人体内で発見されている。哺乳類カスパーゼファミリータンパク質は、その構造や機能に基づき、三つの主要なカテゴリに分けることができる。

 

最初のカテゴリ:アポトーシス促進のカスパーゼ

このカテゴリには主にカスパーゼ2、8、9、10、3、6と7が含んでいる。これらのカスパーゼはカスパーゼ増殖法で細胞内タンパク質を効果的に切断し、最終的にはアポトーシスに導く。これらは二つのグループに分けられる。その中に、カスパーゼ2、8、9と10はアポトーシスの開始に関与(イニシエーター)し、アポトーシス促進シグナルの存在下で、自己活性化することができ、下流カスパーゼを活性化する。カスパーゼ3、6、7はアポトーシスの実行に関与し、上流イニシエーターに活性化されることができ、活性化の後、特定の基質で作動し、細胞で生物化学的で形態的な変化を起こし、アポトーシスに導く。

 

タイプII:炎症促進的なカスパーゼ

これらは主にカスパーゼ1、4、5、11、12と13を含める。内在免疫反応の活性化では、炎症促進のカスパーゼはPro-IL-1βやPro-IL-18など、特定したサイトカインの成熟を仲介し、活性のIL-1βとIL-18を形成する;パイロトシスという細胞死亡に関与することもできる。

 

第三のカテゴリ:ケラチノサイトの分化

主な作用剤はカスパーゼ-14である。カスパーゼ-14は、非アポトーシス性のシステインプロテアーゼである。その主な機能は、基底表皮層に発見され、ケラチノサイトの角質化プロセスの間で活性化され、ケラチノサイトの分化と角質化に関与することである。

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哺乳類におけるカスパーゼの機能的な分類

Shi Y. Mechanisms of Caspase Activation and Inhibition during Apoptosis. Molecular Cell, Vol. 9, 459–470, March, 2002.

 

1.カスパーゼはアポトーシスと炎症のメディエーターであり、神経変性疾患、炎症、代謝疾患や癌などの様々な疾患の治療のためのよき標的になってきている。

 

①    カスパーゼ-1

カスパーゼ-1は、アポトーシスと炎症の過程に重要な役割を果たしているプロテアーゼである。その主な機能は炎症促進サイトカインの活性化、アポトーシスとパイロトシスに関与することである。カスパーゼ-1は、神経疾患、心血管疾患、代謝性疾患、眼疾患、慢性肝不全などの疾患の発生には直接的に、または間接的に関与している。現在、カスパーゼ-1を標的にしている小分子薬剤CTS-2090, CTS-2096, ML-132, TMC-Ag5 は前臨床研究の段階にあり、Q-004は薬物発見の段階にある。

 

②    カスパーゼ-3

哺乳類細胞におけるアポトーシスの重要なプロテアーゼは、重要なタンパク質を特定的に切断することで、DNA溶解に導き、よって細胞のアポトーシスを促進する。この酵素は神経変性疾患、心血管疾患、代謝性疾患など様々な疾患や乳癌、卵巣癌、など様々な癌の発生と進行に緊密に関与している。カスパーゼ-3は最も有名で、細かく研究された標的の一つである。SM-1、スフタラン亜鉛とNWL-283はみなカスパーゼ-3阻害剤であり、中でもSM-1は臨床研究の第三期にある。

 

③    カスパーゼ-8

カスパーゼ-8は細胞アポトーシスと免疫制御で重要な役割を果たし、外因的アポトーシス経路の開始因子でもある。カスパーゼ-8は、細胞のアポトーシスを誘発するだけではなく、異なる細胞死亡パターンの間の形質転換の制御にも関与している。研究によると、カスパーゼ-8の異常は、乳癌、肺癌、肝癌、神経変性疾患、免疫システム障害などの疾患や癌に深く関与している。現時点で、新薬リポジトリ(New Drug Repository)が提供した情報によると、開発中のカスパーゼ-8を標的とする小分子薬物はまだないという。

 

④    カスパーゼ-9

アポトーシスの重要な制御因子として、カスパーゼ-9は細胞内恒常性の維持と異常増殖の阻止に重要な役割を果たしている。細胞が内部ストレスまたは損傷を受けると、カスパーゼ-9は活性化され、アポトーシスプログラムを惹起し、損傷した細胞を除去する。研究の結果によると、カスパーゼ-9は、神経変性疾患、癌と免疫システム疾患などの様々な疾患の発生と進行に深く関与していることがわかった。現時点では、前臨床研究にある小分子薬剤OT-717が一つある。

 

2.カスパーゼ基質

主に二つのパートで形成されている:カスパーゼ認識配列とシグナル生成(発色基質と蛍光基)である。異なるカスパーゼ認識配列はそれぞれ異なる。カスパーゼ酵素認識配列は主に、三つまたは四つのアミノ酸で形成され、酵素認識配列のN末端は一般的に、アセチル(Ac)またはカルボキシメトキシ(Z)基で修飾され、膜の透過性を増やす。対応するカスパーゼは特定のペプチド配列を酵素切断部位として認識し、シグナルを合成または阻害するモチーフを放出する。カスパーゼの発色基質と蛍光基質は同じ方法で機能し、基質のシグナルまたはカラー強度はそのタンパク質分解活性に直接比例する。

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カスパーゼ発色基質:カスパーゼ認識配列と発色団で構成されている。pNAパラニトロアニリンまたは4-ニトロアニリンを含んだ一般的な発色団は酵素連結の免疫吸着アッセイ(ELISA)または分光光度計で、405nmの光学濃度で検出されることができる。

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カスパーゼの蛍光基質:その構造には、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(AFC)などのカスパーゼによる認識に関連する蛍光グループが含まれている。また、AMCとAFCで標識されたカスパーゼ基質は動的なアッセイに使われている。

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カスパーゼ阻害剤:カスパーゼ認識配列とプロテアーゼ阻害モチーフで形成されている。カスパーゼ阻害剤はカスパーゼの活性部位に連結し、可逆的または不可逆的な連結を形成することができる。カスパーゼ認識配列のC末端は一般的に、アルデヒド(- CHO)またはフルオロメチルケトン(- FMK)などの官能基で形成されている。アルデヒド官能基のあるシステイン阻害剤は可逆的で、FMKのある阻害剤は不可逆的である。カスパーゼの基質と阻害剤の両方とも最小の細胞毒性効果を持つので、カスパーゼ活性の有用な研究ツールである。

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